女性が活動し、活躍もするけれど
旧フランス租界の一角に、上海作家協会の事務所があります。
中国のベストセラー作家がよく出入りしています。
協会の会長を務めているのは王安憶さん。小説「長恨歌」で知られる女流作家です。上海の文壇のトップといえます。
中国語の名前は男女の区別がつきにくいことが多いうえ、「他(彼)」と「她(彼女)」の発音も同じ。中国の人も説明する際、わざわざ「女性」や「女流」とはつけず、「会長は○○さんです」という言い方をします。後になってから女性だとわかることがよくあります。
ちなみに、伝統的な書や中国画の分野でも上海でトップとされる人は二方とも女性だと聞いたことがあります。どちらも80歳を超えていますが、現役で活動しているそうです。
国宝の称号をもつ中国料理のシェフにも女性がいます。70を過ぎて引退したものの、今も多くの料理人たちから尊敬を集めています。
若い女性の経営者や会社の役員にもよく会います。
上海の常住人口は2400万人以上。そのうち上海戸籍を持つ人の男女比率は女性が少し上回りますが、特別に偏っているわけではありません。
「会長は女性なんですか?」と驚く私を見て、中国の人から「日本では女性のトップがそんなに珍しいんですか?」と聞き返されます。いや、そんなことはないのだけれど・・・・・・。
中国全土と世界中から夢と野心を抱く人が集まってくる上海では、男性も女性も中国人も外国人も、必死になってチャンスをつかまなければ頭ひとつ抜けることさえ難しい。
この街では多くの女性が活動し、活躍もしているけれど、そこに女性の「活用」という前提はないし、たぶんそんな発想もない。そもそも活用という中国語自体、あまり見かけないような(日中辞典では「利用」と訳されています)。
上海と東京を比べるとほとんどの物事において東京は進んでいます。成熟もしています。けれど、たまに、限定的にですが、上海が遥か先を走っているなあと思うときがあるのです。