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今日も上海日和。

森麻衣佳のAll About公式ブログ。上海で起きていること、日々のこと。

抗日戦争勝利の記念軍事パレードが行われた日、上海で

 

9月3日は北京で大々的な軍事パレードが行われました。

中国の公的メディアは「抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利70周年」というタイトルで式典を報じていました。

中国はこの日から3日間連休です。意識的なのか「抗日」という言葉を使わず、「反ファシズム連休」と呼ぶ人やメディアがちらほら。

 

私はこの日、上海にて2週間前くらいから企画されていた昼食会に行ってきました。

メンバーは中国人7人(20代、30代、40代3人、50代、70代)、プラス日本人の私が一人。

 

声をかけてくれたのは以前から親交のある美食評論家の江礼暘先生。70代の方です。

江先生主宰の食事会には数年前から時々参加しています。連絡が来たときはこの日に中国人と食事会ってどうなんだろうと少し迷ったものの、まあ上海人はいつも国の行事にはクールだから大して気にしていないのかなあと思い、行きますと返事をしました。

 

ところが。

 

今回の行事は「閲兵」や「大閲兵」と呼ばれ、上海でも結構な盛り上がりなんです。

普段はテレビをほとんど見ない彼らが、この日はみんな朝から見ていたようで、Wechatのモーメンツ(Facebookの投稿みたいなもの)上には閲兵関連の投稿がガンガンアップされていきます。ちょっと笑えるコラージュのシェアも多数(中には悪趣味なものも)。

仲のいい人や日本人の友人が多い中国人、ファッションなどブランド関係者、インテリ層の一部は終始沈黙を貫いていましたが、その他大勢の熱狂っぷりに私は朝から引きぎみ。

今回の昼食会のメンバーはほとんどが顔見知りではありますが、どんな雰囲気になるだろうと思いながら出かけました。

 

 

レストランに着くなり、

「あ!来た来た、よかった」

「今日は日本人は来にくいかなと思ってた」との声が。

 

「・・・来ちゃまずかったですかね?」

「まずいと思うなら私は呼ばないよ」と、すかさず江先生。

他の人からも「全然気にすることないよ!」と口々に言われ、和やかに笑いあったそばから、40代の男性が「閲兵、閲兵」と言っていきなりレストランの個室にあったテレビのスイッチをオン。え、えー?

 

式典が気になっていたようで、みんな画面に目が釘付け。確かに、あっけにとられるほどすごい規模なんです。パレードに老兵の登場、航空ショーと、次々と展開されます。

 

とはいえ一緒になってテレビを見るのも、消してもいいですかね?と言うのもなんだかなあと思っていたら、江先生が「音を小さくしなさい」と一言。ほっとしました。

 

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食事中は徐々に日中の歴史の話題へ。日本では1937年からの戦争をなんと呼んでいるのか、などと色々質問され、へええ、みたいな感じに。みんな興味津々なのです。

私もせっかくなので、「中国の人は盛り上がっているけど、今も多くの人は日本人のことが嫌いなんですか?抗日式典を見て憎しみがわいてきますか?」と聞いてみました。これについてはみんなが「は?」という感じで驚き、即座に首を横に振って否定。

 

「そんなのバカバカしい!」

「これはそういう行事じゃないんだよ」

「みんな自分たちの国の歴史観で勉強しているから、お互いに正しいと思っている歴史には偏りがあると思う。中国人も、当時の日本に何が起こっていたかをきちんと知らないという認識は、多くの人が持っているんだよ」

 

彼らと話していて思ったのは、どうやら70年を経て欧米諸国とも肩を並べられる大国になったことに、言葉にならない誇りを感じているようです。上海は租界のあった代表的な街ですから、その思いは一層強いのかもしれません。

 

昼食会は安徽省料理のレストランで行われました。ちょうど月餅(げっぺい)のシーズンだったこともあり、参加者の一人がお店特製のギフト用の月餅セットをお買い上げ。

中国語では「月餅」と「閲兵」はどちらも「ユエビン」と発音します。買った人が「ユエビン(閲兵)を見ながらユエビン(月餅)を食べよう!」と包みを開け、みんなで分け合って食べたのでした。うーむ・・・。

 

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この閲兵によって、多くの中国人が国を誇りに思う気持ちをかきたてられたことは確かだと思います。

式典を全体的に見れば、日本憎しというメッセージは強調されていないように感じました。

ただ、国民の心を一つにした特別な式典の内容が軍事力を誇示するものであったことに危うさと拒否感を覚えてしまうのは、私が日本人だからでしょうか。

 

なんだかやりきれない気持ちが残りましたが、帰宅してからこの日の江先生を思い出すうちに落ち着いてきました。

 

私を食事会に呼んでくれた江先生は、ご家族を含めて戦争の影響でずいぶん苦労されたという話を、以前人づてに聞いたことがあります。

でもこの日、先生だけは軍事パレードについて自分からは一言も発しませんでした。食事の間、日本と中国には文化交流の長い歴史があることや、現代中国に浸透している日本語についてのユーモラスな話をされていました。

 

とりあえず先生に昼食会のお礼の連絡をすると、Wechatにメッセージが来ました。

 

中国の人民はなにも日本人に反対しているわけじゃないんだよ。私たちはこれから先、何代にも何代にもわたって友好的な関係を続けていかなくっちゃ!

 

最後に合掌と握手の絵文字。

 

疲れた一日でしたが、この日、中国の人たちと食卓を囲んで話をしたのは意味のあることだったかもしれないと思いました。