今日も上海日和。

森麻衣佳のAll About公式ブログ。上海で起きていること、日々のこと。

上海で暮らしてから、沖縄の深さがわかった、かもしれない

 

中国の雑誌の仕事で沖縄取材に行ってきました。実に6年ぶり。 滞在中、台風21号が到来したりして当初のスケジュールを若干変更したものの、撮影中は雨も降らずいい天気!!

 

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青い海と空の南国リゾート、基地、本土とは異なる食文化、といったイメージが強かった沖縄ですが、久しぶりに訪れて、以前とは違った印象を抱きました。

とりわけ心に強く刻まれたのは、生活や文化のいたるところに琉球王国の時代に受けた古代中国の影響が色濃く残っていると感じたことです。以前は首里城に行ったときくらいしか意識しなかったのですが。

 

たとえば、伝統装身具をモダンに昇華させたアクセサリーの工房で、コウモリのモチーフを見かけました。中国では今でもコウモリは吉祥の意味があります。

 

昔の士族の住宅の前には「ひんぷん」と呼ばれる壁が立っていました。これは江南建築でみられる「屏風(ピンフォン)」そのもの。一緒に訪れた中国人スタッフも驚いていました。彼女によれば、沖縄の伝統的な装束はモンゴル族の民族衣装によく似ているとも。

 

沖縄料理も、あれ?中国で食べたことがあるかも、という料理が多いことに気がつきました。

昔ながらのおやつだという「ヒラヤチー」や「ポーポー」は中国の点心にそっくり。ポーポーは甘味噌などをクレープ状に包んだもので、名前も「包包」という中国語に由来。

炒める調理法が多いことも、ラフテーをはじめ豚肉の使い方も似ています。琉球在来種の高級豚として有名なアグー豚は、元は600年ほど前に中国から伝わった豚だそうです。戦争で絶滅しかけるも、復活を遂げた貴重な豚です。

 

また、街を歩いているとT字路のあたりでよく見かける「石敢當」と書かれた魔除けも、中国由来のものであることは有名です。中国の武将の名前であり、現在も中国のいくつかの地方に同じものが残っているようです。

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一方、沖縄の言葉には「候文」と呼ばれる古代の和語の名残もよくみられるといわれています。古民家の内部のつくりなども日本家屋の様相です。

 

日本と中国の古い文化を濃厚に残しつつ、戦後のアメリカの影響も溶け込ませ、自分たちの文化を紡いでいる沖縄。島全体に力が漲っているように感じました。様々な国の租界がつくられ、哀しみも織り交ぜながら独自の文化を築いてきた上海と少しだけ似ている気がしました。

 

また、今回は観光スポットにショップ、ギャラリー、カフェ、工房、ホテル、ダイビングショップなど様々な場所を取材しましたが、取材をした人の中に本土から沖縄へ移住した人が結構いたことも心に残っています。なかには同郷の人もいたりしてなんだか不思議。上海で生活する私には、気持ちを共有できる部分がある気がして(勝手ですが)、思うところがありました。

 

沖縄の印象がガラッと変わったのは、街自体の変化もあるでしょうが、東京を離れて上海で5年過ごし、私自身が変わったことが大きいのかもしれません。

 

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それにしても、中国人観光客が増えたことには驚きました。山奥のカフェでさえも中国語が聞こえてきました。台湾人や香港人が相当来ているほか、ビザの関係もあって最近は中国大陸からも多数来ているようです。

 

上海から沖縄に着いたときの飛行機で、こんなことがありました。

中国人の若い女性二人が我先にと人を押しのけてタラップを降りようとしたのですが、前にいたある日本人男性が彼女たちを止めて、中国語を使ってこう言ったのです。

「僕はここ沖縄の出身で、君たちが来てくれるのは歓迎している。でも、ここでは順番に通るのがルール。ちゃんと並んで待ってね」。

やさしい言い方で、注意された二人も「はーい」という感じで素直に待っていました。咄嗟にこういうふうに言えるのはすごい。

 

中国の人はマナーを守らないというよりルールが違う、知らない、といったほうが近いので(ただ、こういう行為を恥ずかしいと感じている中国人も大勢います。礼儀正しい中国人は日本人と見分けがつかないので目立たないんですね)、単に眉をひそめるのではなく、こういうふうにやさしく、はっきりと教えてあげられたらお互いに前進できるなあと思いました。これこそ観光客への思いやりであり、郷土愛とも言えるような。

観光都市として経験を積み重ねてきた、沖縄の大人な一面を見た気がしました。

 

 

食べ物とお土産のこと

 

沖縄の食材は生命力にあふれている。改めてそう実感しました。普段、上海で新鮮(かつ安全)な食材を探すのに苦労してい る私には夢のよう。とりわけ沖縄本島の北部、やんばるといわれる地方でとれる食材は、命を味わっている感じがします。葉もの野菜の香りと味の濃さ、大地のエネルギーを凝縮したような根野菜の力強さ。食事するごとに元気が湧いてくるように思いました。

鬱蒼とした森林、霧のような細かい雨、青く青く深い 海、海中の花畑のようなサンゴ礁、強烈な光を放つ太陽。自然の恵みがどれだけ得難く、どれだけ贅沢なものであるかは、失った環境にいるからこそわかるのかもしれません。

 

今回の取材を強力にサポートしてくれたのはアンドインディーさん! 日本のメディアでも有名なコーディネーション会社です。私自身、機内誌の編集者時代にお世話になったことがあり、6年ぶりの再会となりました。

ベテランコーディネーターのシュウちゃん(←年上です)はロケ地だけでなく沖縄全土の美食に精通し、取材の間の食事が毎日楽しみでした。

 

 

取材先以外では、シュウ先生の案内でこんな食事もしました。

 

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行ってみたかったタコスの有名店「メキシコ」。タコスがこんなにおいしい食べ物だったとは! 皮の絶妙な柔らかさと香ばしさ、タコミートの品のよい味付け。オリオンのノンアルコールがあったのも嬉しい。いくつでも食べられそうでした。

 

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台風が直撃すると思って午後のスケジュールをあけていたらコースが外れて晴れ!ということで、昼から那覇の渋ーい魚屋さんで海鮮の七輪焼きと缶ビール。最高。

 

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「キビ○豚(きびまるとん)」という沖縄県産ブランド豚肉のしゃぶしゃぶも食べました。サトウキビや紅芋を食べて育った豚で、口どけがよく、脂身にもほんのり甘みがあって美味。お店は国際通りの裏手にある「Banquet Kitchen 沖縄食感」。リーズナブルに楽しめるおすすめ店です。

 

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これは滞在先だった那覇のホテルユクエスタさんの朝食。イタリアンレストランでの日替わりプレートです。少しずついろいろな種類がのせられ、温かい料理が熱々で供されます。コンパクトなビジネスホテルですが、きれいでサービスもよく、快適でした。

 

 

最後に自分へのお土産として買ったものを。

 

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沖縄は手仕事の宝庫。荷物をあまり増やしてはいけないと思いつつ、取材先で美しい器を見るとつい欲しくなってしまいます。

おおやぶみよさんのグラスは本当に買ってよかった!沖縄の明るい陽射しの中で選びましたが、上海に戻ってからも、曇り空でも雨の日でもブルーグリーンの光がほのかに揺らいで空間を美しくしてくれます。

粕谷修朗さんのお茶碗、谷口室生さんのお皿、ヒヅミ峠舎さんの小皿も早速使っています。みなさん沖縄に工房を構えているか、あるいは沖縄で修業されたことのある作家さんです。

那覇で手に入れた「名護珈琲」は沖縄でつくられている国産コーヒー。すっきり、かつまろやかな風味でおいしい。今回は行けませんでしたが、「ヒロコーヒーファーム」にも再訪したいです。

 

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これは沖縄産の紅茶「raffiane クラシック」。世界三大紅茶で知られる中国の祁門(キーメン)紅茶の味わいに似ている!いや、祁門紅茶よりクセがなく、やさしい風味があり、個人的にはさらに好み。無農薬です。滞在ホテルの部屋に用意されていた「沖縄ティーファクトリー」というブランドの琉球紅茶もおいしかったし、沖縄生まれの紅茶、注目です。

 

気がついたら器と飲み物ばかりですが、さらに「瑞泉 おもろ 10年」という古酒(クース)も買ってしまった私。お店の人から沖縄の黒糖をなめつつ飲むのが通と聞き、本当かしらと上海で試してみたところ、なんだかなんだか、人間がだめになりそう。。ほどほどにします。

 

まだまだ紹介したいことがたくさんありますが、このあたりで。

 

とにかく、沖縄の自然と文化の深さを強く感じ、以前に増して興味と親しみを覚えたのは、上海で暮らしたからではないかと思っています。