今日も上海日和。

森麻衣佳のAll About公式ブログ。上海で起きていること、日々のこと。

メンツの国で、レストランコンテストの審査員をしてみたら

 

中国のメジャーなレストラン雑誌が主催する「盛宴・中国 Top100」というレストランコンテストで、なぜか専門審査員に選ばれてしまいました。

軽い気持ちで引き受けたら審査員としての取材も行われ、なにやら大ごとです。

数か月にわたって何度か審査活動をし、結果は来春発表されるとのこと。

 

先日、とあるラグジュアリーホテルの中国料理レストランの審査会に出席しました。

他の専門審査員はプロの評論家やシェフ、テレビの司会者という顔ぶれです。単に美味しいものに執着があるだけで専門家とはとても言えない私はひたすら恐縮。

最近、中国の雑誌の取材はムービー撮影も一緒に行うことが多く、この日も会場入場時からムービーのカメラが入りました。

 

料理の一品一品はよくできていて、なかには素晴らしいものもありました。

が、コース全体の構成としては重いように思ったのと、もう少し思い切りがあってもいいのになあと思った料理もいくつか。

また、聞けば審査のために用意した特別コース料理で(ありがち)、普段のメニューにはないとのこと。それはお店としての評価になるのだろうか・・・。

 

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難しいと思ったのはカメラが回る中、母国語ではない言葉で、作った人を前に他国の料理を評価すること。

私以外の専門審査員(中国人)はみんなほぼ絶賛しています。

 

これは常々感じることですが、メンツを重んじる国・中国ではどうも相手を褒めることはあっても、マイナスの意見はみんなの前では言わない人が多いように思います。

聞く側も批判(とまでいかないのですが)に慣れておらず、うっかり率直な感想を言ってしまうと相手を傷つけてしまうことがあります。

 

今回は別に辛口意見を求められて審査員に選ばれたわけではありません。

コメントを言う順番がきたとき、咄嗟にバーッとこんなことが頭に浮かびました。

 

自国の評論家が褒めている中、思った通りの感想を批判と受け取られないように表現できるほどの語学力があるか?

権威あるメディアでカメラが回る中、外国人から上手くもない言葉でマイナス部分を指摘されたらどう思うか?

しかも、相手は有名ホテルのシェフ。メンツ命。

日本料理の審査ならともかく、そもそも中国料理に対して厳しいコメントを求めているわけではない。

 

というわけで結局、カメラが回る中でのコメントはいいと思ったことしか言えなかった私。しかも微妙に緊張してしどろもどろ。

話した内容は嘘ではないのでいいのですが、日本語であれば相手に失礼にならない言い方で、もっとしっかり話せるのに・・・せめて採点だけは自分の思った通りにつけてみました。

 

一般審査員として参加していたデンマーク人が、英語でとても素直な意見を述べていました。

マイナス部分も指摘していて偉いなあと思ったのですが、結局みんなに通訳されたのは褒めた部分のみ。その後の記事にもマイナス意見は取り上げられていませんでした…。

 

まあこういうコンテストはエンタメ的な要素が強いのでしょうが、メンツを重んじる国での審査活動って難しいですね。

 

昔、テレビ番組「料理の鉄人」の審査員だった香港の蔡蘭さんは今でもご活躍です。

あの鋭い辛口コメントは中華圏においては異色なのだと思いますが、彼の場合は通訳もいて母国語で話せたのと、辛口のキャラが求められていたことが大きい。

そしてなにより、評価される相手と参加者に、マイナス要素も意見として聞く心構えがあった。これは重要です。

 

言葉の難しさと文化の違い、そして、自分は審査員には向いていないと痛感したのでした。