上海の人気ショッピングモールは、アート展の気合いが違う
先日、人気のショッピングモール「K11」内にある「chi K11美術館」へ、今期のアート展のオープニングイベントに行ってきました。モールの地下3階の大部分が展示スペースになっています。
今回のテーマは「影像館(Chinemathique)」。写真家の陳維(チェンイー)と映像作家の程然(チョンラン)、それぞれの作品展になります。
どちらのアーティストも複数のジャンルで活動しており、写真や映像、音楽、インスタレーションを組み合わせた作品が中心でした。
個人的に面白かったのは程然の作品。内モンゴル出身の1981年生まれのアーティストです。
「チューインガムペーパー」という作品には多くの人が足を止めていました。ドラムを叩く音とキング牧師の「I Have a Dream」という声をバックに、丸めた銀色のガムの紙くずがドラムの上で飛び跳ね、震え続ける様子を撮った映像作品です。
「まるで孤独な銀河のよう」との解説がありました。
展示の目玉は6分26秒のショートムービー「信(Always I Trust)」。
ある日、見知らぬ女性から程然自身に届いたスパムメールにインスピレーションを得て制作したものだそうです。
作品には有名ベテラン女優の劉嘉玲(カリーナ・ラウ、トニー・レオンの奥さん)が出演。未来と悲愴感が漂う都会の映像を絡ませながら、彼女が感情を押し殺した表情で「あなたは私のことをきっと覚えていないと思うけど」などと、淡々と語り続けます。絶望のにじむ声が印象的で、人の声もアートになるものだと思いました。
中国語と英語の字幕が出ます。映像を見せる空間もユニーク。
上海の若い人は現代アートを中心に、アートを見に行くのが大好き。何でもいいというわけではなく、ツボにはまるもの、はまらないものの差が結構はっきりしているように思います。
その点、K11で開催する企画はいつもポイントをおさえていて(若手有名コレクターがアート基金の代表です)、プロモーションも大々的。毎回のようにヒットをとばしています。
K11と人気を二分するショッピングモール「iapm」も、やはりアートへの取り組みに力を入れています。アートが集客の大きな要素になっているのでしょう。
イベントにはアート関係者に加えてK11のVIP客も招待され、大変な人でした。
現在、chi K11美術館で開催中の「影像館」。
展示は5月31日まで。モールの営業時間にあわせ、夜10時まで見られます。